《ひと》の事だからはなはだ洒落《しゃらく》な助言《じょごん》をした。
 橋本がいよいよいっしょに北へ行くと云う事になってから、余はすべてのプログラムを橋本に委任してぶらぶらしていた。橋本は汽車の時間表を見たり、宿泊地の里程を計算したり二三日の間はしきりに手帳へ鉛筆で何か付け込んでいた。ときどき、おいどうも旨《うま》く行かんよ、ここを火曜の急行で出るとするとなどと相談を掛けるから、いいさ火曜がいけなければ水曜の急行にしようと、まるで無学な事を云っているので、橋本も呆《あき》れていた。よく聞いて見て始めて了解したが、実は哈爾賓《ハルピン》へ接続する急行は、一週にたった二回しかないのだそうである。普通の客車《かくしゃ》でも、京浜間のようにむやみには出ない。一日にわずか二度か三度らしい。だから君のように呑気《のんき》な事を云ったって駄目《だめ》だよと橋本から叱られた。なるほど駄目である。しかも余の駄目は汽車にとどまらない。地理|道程《みちのり》に至っても悉皆《しっかい》真闇《まっくら》であった。さすが遼陽《りょうよう》だの奉天だのと云う名前は覚えているが、それがどの辺にあって、どっちが近いのだ
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