て、僕も一つ診察を願おうかなと云ったら、河西君はとんだお客様だというような顔もせず、明日《あした》の十時頃いらっしゃいと親切に引き受けてくれた。ところが明日の十時頃になると、診察の事はまるで忘れてしまって、相変らず鳥打帽子を被《かぶ》って、強い日の下を焦《こ》げながら、駆《か》け廻った。
橋本が、全体どこまで行くつもりなんだいと聞くから、そうさまあ哈爾賓《ハルピン》ぐらいまで行かなくっちゃ義理が悪いようだなと答えたが、その橋本はどうする料簡《りょうけん》かちっとも分らない。考えて見ると、内地ではもう九月の学期が始《はじま》って、教授連がそろそろ講義に取りかかる頃である。君はこれからどうするんだと反問して見た。さあ僕も哈爾賓ぐらいまで行って見たいのだが、何しろ六月から学校を空《あ》けているんだからねと決心しかねている。かように義務心の強い男を唆《そその》かして見当違の方角へ連れて行ったのは、全く余の力である。その代り哈爾賓を見て奉天へ帰るや否や、橋本は札幌《さっぽろ》から電報をかけられた。いよいよ催促を受けたと電報を見ながら苦笑しているので、いいや、急ぎ帰りつつありとかけておくさと、他
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