》に日が射している。たちまち文鳥に餌《え》をやらなければならないなと思った。けれども起きるのが退儀《たいぎ》であった。今にやろう、今にやろうと考えているうちに、とうとう八時過になった。仕方がないから顔を洗うついでをもって、冷たい縁を素足《すあし》で踏みながら、箱の葢《ふた》を取って鳥籠を明海《あかるみ》へ出した。文鳥は眼をぱちつかせている。もっと早く起きたかったろうと思ったら気の毒になった。
 文鳥の眼は真黒である。瞼《まぶた》の周囲《まわり》に細い淡紅色《ときいろ》の絹糸を縫いつけたような筋《すじ》が入っている。眼をぱちつかせるたびに絹糸が急に寄って一本になる。と思うとまた丸くなる。籠を箱から出すや否や、文鳥は白い首をちょっと傾《かたぶ》けながらこの黒い眼を移して始めて自分の顔を見た。そうしてちちと鳴いた。
 自分は静かに鳥籠を箱の上に据《す》えた。文鳥はぱっと留《とま》り木《ぎ》を離れた。そうしてまた留り木に乗った。留り木は二本ある。黒味がかった青軸《あおじく》をほどよき距離に橋と渡して横に並べた。その一本を軽く踏まえた足を見るといかにも華奢《きゃしゃ》にできている。細長い薄紅《う
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