文鳥
夏目漱石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)伽藍《がらん》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)十月|早稲田《わせだ》に移る。
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十月|早稲田《わせだ》に移る。伽藍《がらん》のような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖《ほおづえ》で支えていると、三重吉《みえきち》が来て、鳥を御|飼《か》いなさいと云う。飼ってもいいと答えた。しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥《ぶんちょう》ですと云う返事であった。
文鳥は三重吉の小説に出て来るくらいだから奇麗《きれい》な鳥に違なかろうと思って、じゃ買ってくれたまえと頼んだ。ところが三重吉は是非御飼いなさいと、同じような事を繰り返している。うむ買うよ買うよとやはり頬杖を突いたままで、むにゃむにゃ云ってるうちに三重吉は黙ってしまった。おおかた頬杖に愛想を尽かしたんだろうと、この時始めて気がついた。
すると三分ばかりして、今度は籠《かご》を御買いなさいと云いだした。これも宜《よろ》しいと答えると、是非御買いなさいと念を押す代りに、鳥籠の講釈を始めた。その講釈はだいぶ込《こ
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