人類の未来の運命に、何《ど》の位の貢献をしてゐるのだらうかと考へる。さうして或《あ》る時は気の毒になる。或る時は悲しくなる。又或る時は馬鹿々々しくなる。最後に折々《をり/\》は滑稽さへ感ずる場合もあるといふ残酷な事実を自白せざるを得ない。左様《さう》した立場から眺めると、如何《いか》に凄《すさま》じい光景でも、如何に腥《なま》ぐさい舞台でも、それに相応した内面的背景を具《そな》へて居ないといふ点に於《おい》て、又それに比例した強硬な脊髄を有して居ないといふ意味に於て、浅薄な活動写真だの軽浮《けいふ》なセンセーシヨナル小説だのと択《えら》ぶ所がないやうな気になる。たとひ殺傷に参加する人々個々の頭上には、千差万別の悲劇が錯綜紛糾《さくそうふんきう》して、時々刻々に彼等の運命を変化しつゝあらうとも、それは当座限りの影響に過《すぎ》ない。永久に吾人《ごじん》一般の内面生活を変色させるやうな強い結果は何処《どこ》からも生れて来ない。とすると、今度の戦争は有史以来特筆大書すべき深刻な事実であると共に、まことに根の張らない見掛倒しの空々《そら/″\》しい事実なのである。(つゞく)
三
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