二人の話しはどこまで行っても竹刀と小手で持ち切っている。黙然《もくねん》として、対坐《たいざ》していた圭さんと碌さんは顔を見合わして、にやりと笑った。
かあんかあんと鉄を打つ音が静かな村へ響き渡る。癇走《かんばし》った上に何だか心細い。
「まだ馬の沓《くつ》を打ってる。何だか寒いね、君」と圭さんは白い浴衣《ゆかた》の下で堅くなる。碌さんも同じく白地《しろじ》の単衣《ひとえ》の襟《えり》をかき合せて、だらしのない膝頭《ひざがしら》を行儀《ぎょうぎ》よく揃《そろ》える。やがて圭さんが云う。
「僕の小供の時住んでた町の真中に、一軒|豆腐屋《とうふや》があってね」
「豆腐屋があって?」
「豆腐屋があって、その豆腐屋の角《かど》から一丁ばかり爪先上《つまさきあ》がりに上がると寒磬寺《かんけいじ》と云う御寺があってね」
「寒磬寺と云う御寺がある?」
「ある。今でもあるだろう。門前から見るとただ大竹藪《おおたけやぶ》ばかり見えて、本堂も庫裏《くり》もないようだ。その御寺で毎朝四時頃になると、誰だか鉦《かね》を敲《たた》く」
「誰だか鉦を敲くって、坊主が敲くんだろう」
「坊主だか何だか分らない。
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