自分で自分の身体に反抗でもするように、あたかもわが衛生を虐待するように、また己《おの》れの病気に敵討《かたきうち》でもしたいように。彼は血に餓《う》えた。しかも他《ひと》を屠《ほふ》る事が出来ないのでやむをえず自分の血を啜《すす》って満足した。
 予定の枚数を書きおえた時、彼は筆を投げて畳の上に倒れた。
「ああ、ああ」
 彼は獣《けだもの》と同じような声を揚げた。
 書いたものを金に換える段になって、彼は大した困難にも遭遇せずに済んだ。ただどんな手続きでそれを島田に渡して好《い》いかちょっと迷った。直接の会見は彼も好まなかった。向うももう参上《あが》りませんといい放った最後の言葉に対して、彼の前へ出て来る気のない事は知れていた。どうしても中へ入って取り次ぐ人の必要があった。
「やっぱり御兄《おあにい》さんか比田さんに御頼みなさるより外に仕方がないでしょう。今までの行掛りもあるんだから」
「まあそうでもするのが、一番適当なところだろう。あんまり有難くはないが。公けな他人を頼むほどの事でもないから」
 健三は津守坂《つのかみざか》へ出掛て行った。
「百円遣るの」
 驚ろいた姉は勿体《もった
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