った。けれども永年勤続して来た結果、権利として彼の手に入るべき金は、一時彼の経済状態を潤おすには充分であった。
「居食《いぐい》をしていても詰らないから、確かな人があったら貸したいからどうか世話をしてくれって、今日頼まれて来たんです」
「へえ、とうとう金貸を遣るようになったのかい」
 健三は平生《へいぜい》から島田の因業を嗤《わら》っていた比田だの姉だのを憶《おも》い浮べた。自分たちの境遇が変ると、昨日《きのう》まで軽蔑《けいべつ》していた人の真似《まね》をして恬《てん》として気の付かない姉夫婦は、反省の足りない点においてむしろ子供|染《じ》みていた。
「どうせ高利なんだろう」
 細君は高利だか低利だかまるで知らなかった。
「何でも旨《うま》く運転すると月に三、四十円の利子になるから、それを二人の小遣にして、これから先細く長く遣って行くつもりだって、御姉《おあね》えさんがそう仰《おっし》ゃいましたよ」
 健三は姉のいう利子の高から胸算用《むなざんよう》で元金《もときん》を勘定して見た。
「悪くすると、またみんな損《す》っちまうだけだ。それよりそう慾張《よくばら》ないで、銀行へでも預けて
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