でも面倒でもなかった。
「御気の毒ですが出来ませんね」
 二人はまた沈黙を間に置いて相対《あいたい》した。
「じゃ何時頃頂けるんでしょう」
 健三には何時という目的《あて》もなかった。
「いずれ来年にでもなったらどうにかしましょう」
「私もこうして頼まれて上《あが》った以上、何とか向《むこう》へ返事をしなくっちゃなりませんから、せめて日限でも一つ御取極《おとりきめ》を願いたいと思いますが」
「御尤《ごもっと》もです。じゃ正月一杯とでもして置きましょう」
 健三はそれより外にいいようがなかった。相手は仕方なしに帰って行った。
 その晩寒さと倦怠《けんたい》を凌《しの》ぐために蕎麦湯《そばゆ》を拵《こしら》えてもらった健三は、どろどろした鼠色のものを啜《すす》りながら、盆を膝《ひざ》の上に置いて傍《そば》に坐っている細君と話し合った。
「また百円どうかしなくっちゃならない」
「貴夫《あなた》が遣《や》らないでも好いものを遣るって約束なんぞなさるから後で困るんですよ」
「遣らないでもいいのだけれども、己《おれ》は遣るんだ」
 言葉の矛盾がすぐ細君を不快にした。
「そう依故地《えこじ》を仰《お
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