を通じて面会を求めに来た。行掛り上断る訳に行かなかった健三は、座敷へ出て差配じみたその人の前に、再び坐《すわ》るべく余儀なくされた。
「どうも御忙がしいところを度々《たびたび》出まして」
 彼は世事慣れた男であった。口で気の毒そうな事をいう割に、それほど殊勝な様子を彼の態度のどこにも現わさなかった。
「実はこの間の事を島田によく話しましたところ、そういう訳なら致し方がないから、金額はそれで宜《よろ》しい、その代りどうか年内に頂戴《ちょうだい》致したい、とこういうんですがね」
 健三にはそんな見込がなかった。
「年内たってもう僅《わず》かの日数しかないじゃありませんか」
「だから向うでも急ぐような訳でしてね」
「あれば今すぐ上げても好《い》いんです。しかしないんだから仕方がないじゃありませんか」
「そうですか」
 二人は少時《しばらく》無言のままでいた。
「どうでしょう、其所《そこ》のところを一つ御奮発は願われますまいか。私《わたくし》も折角こうして忙がしい中を、島田さんのために、わざわざ遣《や》って来たもんですから」
 それは彼の勝手であった。健三の心を動かすに足るほどの手数《てかず》
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