した。
半紙に認ためられたものは悉《ことごと》く鉛筆の走り書なので、光線の暗い所では字画さえ判然《はんぜん》しないのが多かった。乱暴で読めないのも時々出て来た。疲れた眼を上げて、積み重ねた束を見る健三は落胆《がっかり》した。「ペネロピーの仕事」という英語の俚諺《ことわざ》が何遍となく彼の口に上《のぼ》った。
「何時まで経ったって片付きゃしない」
彼は折々筆を擱《お》いて溜息《ためいき》をついた。
しかし片付かないものは、彼の周囲前後にまだいくらでもあった。彼は不審な顔をしてまた細君の持って来た一枚の名刺に眼を注がなければならなかった。
「何だい」
「島田の事についてちょっと御目に掛りたいっていうんです」
「今|差支《さしつかえ》るからって返してくれ」
一度立った細君はすぐまた戻って来た。
「何時伺ったら好《い》いか御都合を聞かして頂きたいんですって」
健三はそれどころじゃないという顔をしながら、自分の傍《そば》に高く積み重ねた半紙の束を眺めた。細君は仕方なしに催促した。
「何といいましょう」
「明後日《あさって》の午後に来て下さいといってくれ」
健三も仕方なしに時日を指定し
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