》何度となく眼を覚ますのを知っていた。大事な睡眠を犠牲にして、少しも不愉快な顔を見せないのも承知していた。彼は子供に対する母親の愛情が父親のそれに比べてどの位強いかの疑問にさえ逢着《ほうちゃく》した。
四、五日前少し強い地震のあった時、臆病《おくびょう》な彼はすぐ縁《えん》から庭へ飛び下りた。彼が再び座敷へ上《あが》って来た時、細君は思いも掛けない非難を彼の顔に投げ付けた。
「貴夫は不人情ね。自分一人好ければ構わない気なんだから」
何故《なぜ》子供の安危《あんき》を自分より先に考えなかったかというのが細君の不平であった。咄嗟《とっさ》の衝動から起った自分の行為に対して、こんな批評を加えられようとは夢にも思っていなかった健三は驚ろいた。
「女にはああいう時でも子供の事が考えられるものかね」
「当り前ですわ」
健三は自分が如何《いか》にも不人情のような気がした。
しかし今の彼は我物顔に子供を抱いている細君を、かえって冷《ひやや》かに眺めた。
「訳の分らないものが、いくら束になったって仕様がない」
しばらくすると彼の思索がもっと広い区域にわたって、現在から遠い未来に延びた。
「今に
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