この前と同じ挨拶《あいさつ》を用いたように、それを貰《もら》う御常の辞令も最初と全く違わなかった。その上偶然にも五円という金高《かねだか》さえ一致していた。
「この次来た時に、もし五円札がなかったらどうしよう」
健三の紙入がそれだけの実質で始終充たされていない事はその所有主の彼に知れているばかりで、御常に分るはずがなかった。三度目に来る御常を予想した彼が、三度目に遣る五円を予想する訳に行かなかった時、彼はふと馬鹿々々しくなった。
「これからあの人が来ると、何時でも五円遣らなければならないような気がする。つまり姉が要《い》らざる義理立《ぎりだて》をするのと同じ事なのかしら」
自分の関係した事じゃないといった風に熨斗《ひのし》を動かしていた細君は、手を休めずにこういった。――
「ないときは遣らないでも好《い》いじゃありませんか。何もそう見栄《みえ》を張る必要はないんだから」
「ない時に遣ろうったって、遣れないのは分ってるさ」
二人の問答はすぐ途切れてしまった。消えかかった炭を熨斗《ひのし》から火鉢《ひばち》へ移す音がその間に聞こえた。
「どうしてまた今日は五円入っていたんです。貴夫《
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