のある女に違いなかった。
「ことによると己《おれ》の方が不人情に出来ているのかも知れない」
八十七
この会話がまだ健三の記憶を新しく彩《いろど》っていた頃、彼は御常《おつね》から第二回の訪問を受けた。
先達《せんだっ》て見た時とほぼ同じように粗末な服装《なり》をしている彼女の恰好《かっこう》は、寒さと共に襦袢胴着《じゅばんどうぎ》の類でも重ねたのだろう、前よりは益《ますます》丸まっちくなっていた。健三は客のために出した火鉢《ひばち》をすぐその人の方へ押し遣《や》った。
「いえもう御構い下さいますな。今日《きょう》は大分《だいぶ》御暖《おあった》かで御座いますから」
外部《そと》には穏やかな日が、障子に篏《はめ》めた硝子越《ガラスごし》に薄く光っていた。
「あなたは年を取って段々御肥《おふと》りになるようですね」
「ええ御蔭さまで身体《からだ》の方はまことに丈夫で御座います」
「そりゃ結構です」
「その代り身上《しんしょう》の方はただ痩《や》せる一方で」
健三には老後になってからこうむくむく肥る人の健康が疑がわれた。少なくとも不自然に思われた。どこか不気味に見えると
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