代表者の如くに見えた。彼女の考えは単純であった。今にこの夫が世間から教育されて、自分の父のように、型が変って行くに違ないという確信を有《も》っていた。
 案に相違して健三は頑強《がんきょう》であった。同時に細君の膠着力《こうちゃくりょく》も固かった。二人は二人同志で軽蔑《けいべつ》し合った。自分の父を何かにつけて標準に置きたがる細君は、ややともすると心の中で夫に反抗した。健三はまた自分を認めない細君を忌々《いまいま》しく感じた。一刻な彼は遠慮なく彼女を眼下に見下《みくだ》す態度を公けにして憚《はばか》らなかった。
「じゃ貴夫が教えて下されば好《い》いのに。そんなに他《ひと》を馬鹿にばかりなさらないで」
「御前の方に教えてもらおうという気がないからさ。自分はもうこれで一人前だという腹があっちゃ、己《おれ》にゃどうする事も出来ないよ」
 誰が盲従するものかという気が細君の胸にあると同時に、到底啓発しようがないではないかという弁解が夫の心に潜んでいた。二人の間に繰り返されるこうした言葉争いは古いものであった。しかし古いだけで埓《らち》は一向開かなかった。
 健三はもう飽きたという風をして、手
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