さんじょく》を離れ得ない彼女の前に慰藉《いしゃ》の言葉を並べなければならなかった。しかし彼の理解力は依然としてこの同情とは別物であった。細君の涙を拭《ふ》いてやった彼は、その涙で自分の考えを訂正する事が出来なかった。
次に顔を合せた時、細君は突然夫の弱点を刺した。
「貴夫|何故《なぜ》その子を抱いて御遣りにならないの」
「何だか抱くと険呑《けんのん》だからさ。頸《くび》でも折ると大変だからね」
「嘘《うそ》を仰しゃい。貴夫には女房や子供に対する情合《じょうあい》が欠けているんですよ」
「だって御覧な、ぐたぐたして抱き慣《つ》けない男に手なんか出せやしないじゃないか」
実際赤ん坊はぐたぐたしていた。骨などはどこにあるかまるで分らなかった。それでも細君は承知しなかった。彼女は昔し一番目の娘に水疱瘡《みずぼうそう》の出来た時、健三の態度が俄《にわ》かに一変した実例を証拠に挙げた。
「それまで毎日抱いて遣っていたのに、それから急に抱かなくなったじゃありませんか」
健三は事実を打ち消す気もなかった。同時に自分の考えを改めようともしなかった。
「何といったって女には技巧があるんだから仕方がな
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