細君は驚ろいた顔をして夫を見返した。其所《そこ》には自分が今まで無自覚で実行して来た事を、夫の言葉で突然悟らされたような趣もあった。
「何で藪《やぶ》から棒にそんな事を仰《おっし》ゃるの」
「だってそうじゃないか。女はそれで気に入らない亭主に敵討《かたきうち》をするつもりなんだろう」
「馬鹿を仰ゃい。子供が私《わたくし》の傍《そば》へばかり寄り付くのは、貴夫《あなた》が構い付けて御遣《おや》りなさらないからです」
「己《おれ》を構い付けなくさせたものは、取《とり》も直さず御前だろう」
「どうでも勝手になさい。何ぞというと僻《ひが》みばかりいって。どうせ口の達者な貴夫には敵《かな》いませんから」
健三はむしろ真面目《まじめ》であった。僻みとも口巧者《くちごうしゃ》とも思わなかった。
「女は策略が好きだからいけない」
細君は床の上で寐返《ねがえ》りをしてあちらを向いた。そうして涙をぽたぽたと枕の上に落した。
「そんなに何も私《わたくし》を虐《いじ》めなくっても……」
細君の様子を見ていた子供はすぐ泣き出しそうにした。健三の胸は重苦しくなった。彼は征服されると知りながらも、まだ産褥《
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