く》くなった。そうして二人とも自分の有《も》っている欠点の大部分には決して気が付かなかった。
 しかし今の彼は健三に対して疑《うたがい》もなく一時的の弱者であった。他《ひと》に頭を下げる事の嫌《きらい》な健三は窮迫の結果、余儀なく自分の前に出て来た彼を見た時、すぐ同じ眼で同じ境遇に置かれた自分を想像しない訳に行かなかった。
「如何《いか》にも苦しいだろう」
 健三はこの一念に制せられた。そうして彼の持ち来《きた》した金策談に耳を傾むけた。けれども好《い》い顔はし得なかった。心のうちでは好い顔をし得ないその自分を呪《のろ》っていた。
「金の話だから好い顔が出来ないんじゃない。金とは独立した不愉快のために好い顔が出来ないのです。誤解してはいけません。私《わたくし》はこんな場合に敵討《かたきうち》をするような卑怯《ひきょう》な人間とは違ます」
 細君の父の前にこれだけの弁解がしたくって堪らなかった健三は、黙って誤解の危険を冒すより外に仕方がなかった。
 このぶっきら[#「ぶっきら」に傍点]棒な健三に比べると、細君の父はよほど鄭寧であった。また落付《おちつ》いていた。傍《はた》から見れば遥に紳
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