とう遣る気になったんですって、どうせ高い御祈祷代を払ったんじゃないんでしょう」
健三は腹の中で兄を馬鹿だと思った。また熱の除れるまで薬を飲む事の出来ない彼の内状を気の毒に思った。髪剃の御蔭でも何でも熱が除れさえすればまず仕合せだとも思った。
兄が癒ると共に姉がまた喘息《ぜんそく》で悩み出した。
「またかい」
健三は我知らずこういって、ふと女房の持病を苦にしない比田の様子を想い浮べた。
「しかし今度《こんだ》は何時もより重いんですって。ことによると六《む》ずかしいかも知れないから、健三に見舞に行くようにそういってくれって仰《おっし》ゃいました」
兄の注意を健三に伝えた細君は、重苦しそうに自分の尻《しり》を畳の上に着けた。
「少し立っていると御腹《おなか》の具合が変になって来て仕方がないんです。手なんぞ延ばして棚に載っているものなんかとても取れやしません」
産が逼《せま》るほど妊婦は運動すべきものだ位に考えていた健三は意外な顔をした。下腹部だの腰の周囲の感じがどんなに退儀であるかは全く彼の想像の外《ほか》にあった。彼は活動を強《し》いる勇気も自信も失なった。
「私とても御見舞には
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