んだ揚句、気分の悪いのを押して出勤した結果、幾日《いくか》経っても熱が除《と》れないで苦しんでいた。
「つい無理をするもんだから」
無理をして月給の寿命を長くするか、養生をして免職の時期を早めるか、彼には二つの内どっちかを択《えら》ぶより外に仕方がないように見えたのである。
「どうも肋膜《ろくまく》らしいっていうんだがね」
彼は心細い顔をした。彼は死を恐れた。肉の消滅について何人《なんびと》よりも強い畏怖《いふ》の念を抱《いだ》いていた。そうして何人よりも強い速度で、その肉塊を減らして行かなければならなかった。
健三は細君に向っていった。――
「もう少し平気で休んでいられないものかな。責《せ》めて熱の失《な》くなるまででも好《い》いから」
「そうしたいのは山々なんでしょうけれども、やッぱりそうは出来ないんでしょう」
健三は時々兄が死んだあとの家族を、ただ活計《くらし》の方面からのみ眺める事があった。彼はそれを残酷ながら自然の眺め方として許していた。同時にそういう観察から逃《のが》れる事の出来ない自分に対して一種の不快を感じた。彼は苦い塩を嘗《な》めた。
「死にやしまいな」
「ま
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