っとこういって当面の問題を投げた。そうして解決を付けるまで進まないために起る面倒臭さは何時までも辛抱した。しかしその辛抱は自分自身に取って決して快よいものではなかった。健三から見るとなおさら心持が悪かった。
「執拗《しつおう》だ」
「執拗だ」
二人は両方で同じ非難の言葉を御互の上に投げかけ合った。そうして御互に腹の中にある蟠《わだか》まりを御互の素振《そぶり》から能く読んだ。しかもその非難に理由のある事もまた御互に認め合わなければならなかった。
我慢な健三は遂に細君の生家へ行かなくなった。何故行かないとも訊《き》かず、また時々行ってくれとも頼まずにただ黙っていた細君は、依然として「面倒臭い」を心の中《うち》に繰り返すぎりで、少しもその態度を改めようとしなかった。
「これで沢山だ」
「己もこれで沢山だ」
また同じ言葉が双方の胸のうちでしばしば繰り返された。
それでも護謨紐《ゴムひも》のように弾力性のある二人の間柄には、時により日によって多少の伸縮《のびちぢみ》があった。非常に緊張して何時切れるか分らないほどに行き詰ったかと思うと、それがまた自然の勢で徐々《そろそろ》元へ戻って来た
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