て現に貴夫《あなた》の考えていた女とはまるで違った人になって貴夫の前へ出て来た以上は、貴夫の方で昔の考えを取り消すのが当然じゃありませんか」
「本当に違った人になったのなら何時でも取り消すが、そうじゃないんだ。違ったのは上部《うわべ》だけで腹の中は故《もと》の通りなんだ」
「それがどうして分るの。新らしい材料も何にもないのに」
「御前に分らないでも己にはちゃんと分ってるよ」
「随分独断的ね、貴夫も」
「批評が中《あた》ってさえいれば独断的で一向|差支《さしつかえ》ないものだ」
「しかしもし中っていなければ迷惑する人が大分《だいぶ》出て来るでしょう。あの御婆《おばあ》さんは私《わたくし》と関係のない人だから、どうでも構いませんけれども」
健三には細君の言葉が何を意味しているのか能《よ》く解った。しかし細君はそれ以上何もいわなかった。腹の中で自分の父母兄弟を弁護している彼女は、表向《おもてむき》夫と遣《や》り合って行ける所まで行く気はなかった。彼女は理智に富んだ性質《たち》ではなかった。
「面倒臭《めんどくさ》い」
少し込み入った議論の筋道を辿《たど》らなければならなくなると、彼女はき
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