いかと考え出した。
健三は自分を出来るだけ富有に、上品に、そして善良に、見せたがったその女と、今彼の前に畏《かしこ》まって坐っている白髪頭《しらがあたま》の御婆さんとを比較して、時間の齎《もたら》した対照に不思議そうな眼を注いだ。
御常は昔から肥《ふと》り肉《じし》の女であった。今見る御常も依然として肥っていた。どっちかというと、昔よりも今の方がかえって肥っていはしまいかと疑《うたがわ》れる位であった。それにもかかわらず、彼女は全く変化していた。どこから見ても田舎育ちの御婆さんであった。多少誇張していえば、籠《かご》に入れた麦焦《むぎこが》しを背中へ脊負《しょ》って近在から出て来る御婆さんであった。
六十三
「ああ変った」
顔を見合せた刹那《せつな》に双方は同じ事を一度に感じ合った。けれどもわざわざ訪ねて来た御常の方には、この変化に対する予期と準備が充分にあった。ところが健三にはそれが殆《ほと》んど欠けていた。従って不意に打たれたものは客よりもむしろ主人であった。それでも健三は大して驚ろいた様子を見せなかった。彼の性質が彼にそうしろと命令する外に、彼は御常の技巧から
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