悪いからなんだろうよ。何でも嫌われているらしいんだ。島田にいわせると、その柴野という男が酒食《さけくら》いで喧嘩早《けんかっぱや》くって、それで何時まで経っても出世が出来なくって、仕方がないんだそうだけれども、どうもそればかりじゃないらしい。やっぱり島田の方が愛想《あいそ》を尽かされているに違ないんだ」
「愛想を尽かされなくったって、そんなに子供が沢山あっちゃどうする事も出来ないでしょう」
「そうさ。軍人だから大方己と同じように貧乏しているんだろうよ」
「一体あの人はどうしてその御藤さんて人と――」
 細君は少し躊躇《ちゅうちょ》した。健三には意味が解らなかった。細君はいい直した。
「どうしてその御藤さんて人と懇意になったんでしょう」
 御藤さんがまだ若い未亡人《びぼうじん》であった頃、何かの用で扱所《あつかいじょ》へ出なければならない事の起った時、島田はそういう場所へ出つけない女一人を、気の毒に思って、色々親切に世話をして遣《や》ったのが、二人の間に関係の付く始まりだと、健三は小さい時分に誰かから聴いて知っていた。しかし恋愛という意味をどう島田に応用して好いか、今の彼には解らなかった
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