に限らず二人の間にはこういう光景が能く繰り返された。その代り前後の関係で反対の場合も時には起った。――
「御縫さんが脊髄病《せきずいびょう》なんだそうだ」
「脊髄病じゃ六《む》ずかしいでしょう」
「とても助かる見込はないんだとさ。それで島田が心配しているんだ。あの人が死ぬと柴野《しばの》と御藤《おふじ》さんとの縁が切れてしまうから、今まで毎月送ってくれた例の金が来なくなるかも知れないってね」
「可哀想《かわいそう》ね今から脊髄病なんぞに罹《かか》っちゃ。まだ若いんでしょう」
「己《おれ》より一つ上だって話したじゃないか」
「子供はあるの」
「何でも沢山あるような様子だ。幾人《いくたり》だか能く訊《き》いて見ないが」
 細君は成人しない多くの子供を後へ遺して死にに行く、まだ四十に充《み》たない夫人の心持を想像に描いた。間近に逼《せま》ったわが産の結果も新たに気遣われ始めた。重そうな腹を眼の前に見ながら、それほど心配もしてくれない男の気分が、情《なさけ》なくもありまた羨《うらや》ましくもあった。夫はまるで気が付かなかった。
「島田がそんな心配をするのも必竟《ひっきょう》は平生《へいぜい》が
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