《ふなぞこまくら》の上に乱れた頭を載せていた。
「そんなに気になさるなら、御自分で直《じか》に調べて御覧になるが好《い》いじゃありませんか。そうすればすぐ分るでしょう。御姉《おあね》えさんだって、今あの人と交際《つきあ》っていらっしゃらないんだから、そんな確《たしか》な事の知れているはずがないと思いますわ」
「己《おれ》にはそんな暇なんかないよ」
「それじゃ放って御置きになればそれまででしょう」
 細君の返事には、男らしくもないという意味で、健三を非難する調子があった。腹で思っている事でもそうむやみに口へ出していわない性質《たち》に出来上った彼女は、自分の生家《さと》と夫との面白くない間柄についてさえ、余り言葉に現わしてつべこべ弁じ立てなかった。自分と関係のない島田の事などはまるで知らないふりをして澄ましている日も少なくなかった。彼女の持った心の鏡に映る神経質な夫の影は、いつも度胸のない偏窟《へんくつ》な男であった。
「放って置け?」
 健三は反問した。細君は答えなかった。
「今までだって放って置いてるじゃないか」
 細君はなお答えなかった。健三はぷいと立って書斎へ入った。
 島田の事
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