物屋があるが、彼所《あすこ》ならもっとずっと安く拵《こしら》えてくれますよ。こんだ要《い》る時にゃ、私が頼んで上げましょう」
健三の紙入は何時も充実していなかった。全く空虚《から》の時もあった。そういう場合には、仕方がないので何時まで経っても立ち上がらなかった。島田も何かに事寄せて尻《しり》を長くした。
「小遣を遣《や》らないうちは帰らない。厭《いや》な奴だ」
健三は腹の内で憤った。しかしいくら迷惑を感じても細君の方から特別に金を取って老人に渡す事はしなかった。細君もその位な事ならといった風をして別に苦情を鳴らさなかった。
そうこうしているうちに、島田の態度が段々積極的になって来た。二十、三十と纏《まとま》った金を、平気に向うから請求し始めた。
「どうか一つ。私もこの年になって倚《か》かる子はなし、依怙《たより》にするのは貴方《あなた》一人なんだから」
彼は自分の言葉遣いの横着さ加減にさえ気が付いていなかった。それでも健三がむっとして黙っていると、凹《くぼ》んだ鈍い眼を狡猾《こうかつ》らしく動かして、じろじろ彼の様子を眺める事を忘れなかった。
「これだけの生活《くらし》をしてい
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