を幾段にも組み上げて、高いものを一層高く見えるように工夫したその天井は、小さい彼の心を包むに足りなかった。最後に彼の眼は自分の下に黒い頭を並べて、神妙に彼のいう事を聴いている多くの青年の上に落ちた。そうしてまた卒然として現実に帰るべく彼らから余儀なくされた。
 これほど細君の病気に悩まされていた健三は、比較的島田のために崇《たた》られる恐れを抱《いだ》かなかった。彼はこの老人を因業《いんごう》で強慾《ごうよく》な男と思っていた。しかし一方ではまたそれらの性癖を充分発揮する能力がないものとしてむしろ見縊《みくび》ってもいた。ただ要《い》らぬ会談に惜い時間を潰《つぶ》されるのが、健三には或種類の人の受ける程度より以上の煩いになった。
「何をいって来る気かしら、この次は」
 襲われる事を予期して、暗《あん》にそれを苦にするような健三の口振《くちぶり》が、細君の言葉を促がした。
「どうせ分っているじゃありませんか。そんな事を気になさるより早く絶交した方がよっぽど得ですわ」
 健三は心の裡で細君のいう事を肯《うけ》がった。しかし口ではかえって反対な返事をした。
「それほど気にしちゃいないさ、あん
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