まつげ》の鎖《とざ》している奥を見るために、彼は正体《たわい》なく寐入った細君を、わざわざ揺《ゆす》り起して見る事が折々あった。細君がもっと寐かして置いてくれれば好《い》いのにという訴えを疲れた顔色に現わして重い瞼を開くと、彼はその時始めて後悔した。しかし彼の神経はこんな気の毒な真似《まね》をしてまでも、彼女の実在を確かめなければ承知しなかったのである。
 やがて彼は寐衣《ねまき》を着換えて、自分の床に入った。そうして濁りながら動いているような彼の頭を、静かな夜の支配に任せた。夜はその濁りを清めてくれるには余りに暗過ぎた、しかし騒がしいその動きを止めるには充分静かであった。
 翌朝《あくるあさ》彼は自分の名を呼ぶ細君の声で眼を覚ました。
「貴夫《あなた》もう時間ですよ」
 まだ床を離れない細君は、手を延ばして彼の枕元から取った袂時計《たもとどけい》を眺めていた。下女《げじょ》が俎板《まないた》の上で何か刻む音が台所の方で聞こえた。
「婢《おんな》はもう起きてるのか」
「ええ。先刻《さっき》起しに行ったんです」
 細君は下女を起して置いてまた床の中に這入《はい》ったのである。健三はすぐ起
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