どうも。一体|魚《さかな》と獣《けだもの》ほど違うんだから」
「何が」
「ああいう人と己《おれ》などとはさ」
細君は突然自分の家族と夫との関係を思い出した。両者の間には自然の造った溝があって、御互を離隔していた。片意地な夫は決してそれを飛び超えてくれなかった。溝を拵《こしら》えたものの方で、それを埋めるのが当然じゃないかといった風の気分で何時までも押し通していた。里ではまた反対に、夫が自分の勝手でこの溝を掘り始めたのだから、彼の方で其所《そこ》を平《たいら》にしたら好かろうという考えを有《も》っていた。細君の同情は無論自分の家族の方にあった。彼女はわが夫を世の中と調和する事の出来ない偏窟な学者だと解釈していた。同時に夫が里と調和しなくなった源因の中《うち》に、自分が主な要素として這入《はい》っている事も認めていた。
細君は黙って話を切り上げようとした。しかし島田の方にばかり気を取られていた健三にはその意味が通じなかった。
「御前はそう思わないかね」
「そりゃあの人と貴夫《あなた》となら魚と獣位違うでしょう」
「無論外の人と己と比較していやしない」
話はまた島田の方へ戻って来た。細
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