増《ひまし》に募った。自分の好きなものが手に入《い》らないと、往来でも道端でも構わずに、すぐ其所《そこ》へ坐《すわ》り込んで動かなかった。ある時は小僧の脊中《せなか》から彼の髪の毛を力に任せて※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》り取った。ある時は神社に放し飼の鳩《はと》をどうしても宅《うち》へ持って帰るのだと主張してやまなかった。養父母の寵《ちょう》を欲しいままに専有し得《う》る狭い世界の中《うち》に起きたり寐《ね》たりする事より外に何にも知らない彼には、凡《すべ》ての他人が、ただ自分の命令を聞くために生きているように見えた。彼はいえば通るとばかり考えるようになった。
 やがて彼の横着はもう一歩深入りをした。
 ある朝彼は親に起こされて、眠い眼を擦《こす》りながら縁側《えんがわ》へ出た。彼は毎朝寐起に其所から小便をする癖を有《も》っていた。ところがその日は何時もより眠かったので、彼は用を足しながらつい途中で寐てしまった。そうしてその後《あと》を知らなかった。
 眼が覚めて見ると、彼は小便の上に転げ落ちていた。不幸にして彼の落ちた縁側は高かった。大通りから河岸《かし》の
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