。健三は蒼蠅《うるさ》がった。
「なんでそんなに世話を焼くのだろう」
「御父ッさんが」とか「御母さんが」とかが出るたびに、健三は己《おの》れ独りの自由を欲しがった。自分の買ってもらう玩具《おもちゃ》を喜んだり、錦絵《にしきえ》を飽かず眺めたりする彼は、かえってそれらを買ってくれる人を嬉《うれ》しがらなくなった。少なくとも両《ふた》つのものを綺麗《きれい》に切り離して、純粋な楽みに耽《ふけ》りたかった。
夫婦は健三を可愛《かあい》がっていた。けれどもその愛情のうちには変な報酬が予期されていた。金の力で美くしい女を囲っている人が、その女の好きなものを、いうがままに買ってくれるのと同じように、彼らは自分たちの愛情そのものの発現を目的として行動する事が出来ずに、ただ健三の歓心を得《う》るために親切を見せなければならなかった。そうして彼らは自然のために彼らの不純を罰せられた。しかも自《みず》から知らなかった。
四十二
同時に健三の気質も損われた。順良な彼の天性は次第に表面から落ち込んで行った。そうしてその陥欠を補うものは強情の二字に外ならなかった。
彼の我儘《わがまま》には日
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