一応満足させると、今度は同じような事を外の形で訊《き》いた。
「じゃ御前の本当の御父さんと御母さんは」
健三は厭々《いやいや》ながら同じ答を繰り返すより外に仕方がなかった。しかしそれが何故《なぜ》だか彼らを喜こばした。彼らは顔を見合せて笑った。
或時はこんな光景が殆《ほと》んど毎日のように三人の間に起った。或時は単にこれだけの問答では済まなかった。ことに御常は執濃《しつこ》かった。
「御前はどこで生れたの」
こう聞かれるたびに健三は、彼の記憶のうちに見える赤い門――高藪《たかやぶ》で蔽《おお》われた小さな赤い門の家《うち》を挙げて答えなければならなかった。御常は何時この質問を掛けても、健三が差支《さしつかえ》なく同じ返事の出来るように、彼を仕込んだのである。彼の返事は無論器械的であった。けれども彼女はそんな事には一向|頓着《とんじゃく》しなかった。
「健坊《けんぼう》、御前本当は誰の子なの、隠さずにそう御いい」
彼は苦しめられるような心持がした。時には苦しいより腹が立った。向うの聞きたがる返事を与えずに、わざと黙っていたくなった。
「御前誰が一番好きだい。御父ッさん? 御母さん
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