たりして喜こんだ。彼は新らしい独楽《こま》を買ってもらって、時代を着けるために、それを河岸際《かしぎわ》の泥溝《どぶ》の中に浸けた。ところがその泥溝は薪積場《まきつみば》の柵《さく》と柵との間から流れ出して河へ落ち込むので、彼は独楽の失くなるのが心配さに、日に何遍となく扱所の土間を抜けて行って、何遍となくそれを取り出して見た。そのたびに彼は石垣の間へ逃げ込む蟹《かに》の穴を棒で突ッついた。それから逃げ損なったものの甲を抑えて、いくつも生捕《いけど》りにして袂《たもと》へ入れた。……
 要するに彼はこの吝嗇な島田夫婦に、よそから貰《もら》い受けた一人っ子として、異数の取扱いを受けていたのである。

     四十一

 しかし夫婦の心の奥には健三に対する一種の不安が常に潜んでいた。
 彼らが長火鉢《ながひばち》の前で差向いに坐《すわ》り合う夜寒《よさむ》の宵などには、健三によくこんな質問を掛けた。
「御前の御父《おとっ》ッさんは誰だい」
 健三は島田の方を向いて彼を指《ゆびさ》した。
「じゃ御前の御母《おっか》さんは」
 健三はまた御常の顔を見て彼女を指さした。
 これで自分たちの要求を
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