突いて考えさせられるばかりであった。
彼はこうした不安を何度となく繰り返しながら、昔しから今日《こんにち》まで同じ職務に従事して、動きもしなければ発展もしなかった。健三よりも七つばかり年上な彼の半生は、あたかも変化を許さない器械のようなもので、次第に消耗《しょうこう》して行くより外には何の事実も認められなかった。
「二十四、五年もあんな事をしている間には何か出来そうなものだがね」
健三は時々自分の兄をこんな言葉で評したくなった。その兄の派出好《はでずき》で勉強|嫌《ぎらい》であった昔も眼の前に見えるようであった。三味線《しゃみせん》を弾《ひ》いたり、一絃琴《いちげんきん》を習ったり、白玉《しらたま》を丸めて鍋《なべ》の中へ放り込んだり、寒天を煮て切溜《きりだめ》で冷したり、凡《すべ》ての時間はその頃の彼に取って食う事と遊ぶ事ばかりに費やされていた。
「みんな自業自得だといえば、まあそんなものさね」
これが今の彼の折々他《ひと》に洩《もら》す述懐になる位彼は怠け者であった。
兄弟が死に絶えた後《あと》、自然健三の生家の跡を襲《つ》ぐようになった彼は、父が亡くなるのを待って、家屋敷
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