に自由とか開放とかいうような事を主張する。同時に秩序とか組織とか云うものを要求している。一方では束縛を解いて自由にして貰《もら》わなければたまらないと云っていながら、一方では(例えば資本家というようなものが)秩序とか組織を立てなければ事業が発展しないと騒いでいる。が、この二つの要求を較《くら》べると明かに矛盾である。――ここまでは宜《よろ》しいのです。しかしオイケンはこの矛盾はどっちかに片づけなければならず、また片づけらるべきものであるかのごとき語気で論じていたように記憶していますが――すなわちそういうように相反する事を同時に唱《とな》えておっては矛盾だから、モッと一纏《ひとまと》めにして、意味のある生活を人がやって行かなければならぬというような事を言うのです。ですがあなた方《がた》はまあどうお考えになりますか。オイケンの云う通りでよいと御思いですか、はたしてこの矛盾が一纏めになるものとお思いになりますか。また明かに矛盾しているというお考えでありますか。あなた方にこんな質問をかけたってつまらない、また掛ける必要もありません。が私はどう考えてもオイケンの説は無理だと思うのです。なぜ無理だ
前へ 次へ
全35ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング