中味と形式
――明治四十四年八月堺において述――
夏目漱石
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明石《あかし》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)東京の方に平生|住《すま》っております。
−−
私はこの地方にいるものではありません、東京の方に平生|住《すま》っております。今度大阪の社の方で講演会を諸所で開きますについて、助勢をしろという命令――だか通知だか依頼だかとにかく催しに参加しなければならないような相談を受けました。それでわざわざ出て参りました。もっともこの堺だけで御話をしてすぐ東京表《とうきょうおもて》へ立ち帰るという訳でもないので、現に明石《あかし》の方へ行きましたり、和歌山の方へ参りましたり、明日はまた大阪でやる手順になっております。無論話すことさえあれば、どこへ行って何をやっても差支《さしつかえ》ないはずですが、暑中の際そうそう身体《からだ》も続きませぬから、好い加減のところで断りたいと思っております。しかしこの堺は当初からの約束で是非何か講話をすべきはずになっておりましたから私の方もそれは覚悟の上で参
次へ
全35ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング