づくならば、いくら死に近づいても死ねないと云う非事実な論理に愚弄《ぐろう》されるかも知れないが、こう一足飛びに片方から片方に落ち込むような思索上の不調和を免《まぬ》かれて、生から死に行く径路《けいろ》を、何の不思議もなく最も自然に感じ得るだろう。俄然《がぜん》として死し、俄然として吾《われ》に還《かえ》るものは、否、吾に還ったのだと、人から云い聞かさるるものは、ただ寒くなるばかりである。
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縹緲玄黄外[#「縹緲玄黄外」に白丸傍点]。 死生交謝時[#「死生交謝時」に白丸傍点]。 寄託冥然去[#「寄託冥然去」に白丸傍点]。
我心何所之[#「我心何所之」に白丸傍点]。 帰来覓命根[#「帰来覓命根」に白丸傍点]。 杳※[#「穴かんむり/目」、第3水準1−89−50]竟難知[#「杳※[#「穴かんむり/目」、第3水準1−89−50]竟難知」に白丸傍点]。
孤愁空遶夢[#「孤愁空遶夢」に白丸傍点]。 宛動粛瑟悲[#「宛動粛瑟悲」に白丸傍点]。 江山秋已老[#「江山秋已老」に白丸傍点]。
粥薬※[#「髟/丐」、第4水準2−93−21]将衰[#「粥薬※[#「髟/丐」、第4水準2−9
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