#「高秋悲鬢白」に白丸傍点]。
衰病夢顔紅[#「衰病夢顔紅」に白丸傍点]。 送鳥天無尽[#「送鳥天無尽」に白丸傍点]。 看雲道不窮[#「看雲道不窮」に白丸傍点]。
残存吾骨貴[#「残存吾骨貴」に白丸傍点]。 慎勿妄磨※[#「※」は「石+龍」、読みは「ろう」、638−7][#「慎勿妄磨※[#「※」は「石+龍」、読みは「ろう」、638−7]」に白丸傍点]。
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        二十四

 小供のとき家に五六十幅の画《え》があった。ある時は床の間の前で、ある時は蔵の中で、またある時は虫干《むしぼし》の折に、余は交《かわ》る交るそれを見た。そうして懸物《かけもの》の前に独《ひと》り蹲踞《うずく》まって、黙然と時を過すのを楽《たのしみ》とした。今でも玩具箱《おもちゃばこ》を引繰《ひっく》り返したように色彩の乱調な芝居を見るよりも、自分の気に入った画に対している方が遥《はる》かに心持が好い。
 画のうちでは彩色《さいしき》を使った南画《なんが》が一番面白かった。惜しい事に余の家の蔵幅《ぞうふく》にはその南画が少なかった。子供の事だから画の巧拙《こうせつ》などは無論分ろうはず
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