フ講義の時にまた出会った。
「広田先生のことは大丈夫うまくいきそうだ」と言う。どこまで事が運んだか聞いてみると、
「いや心配しないでもいい。いずれゆっくり話す。先生が君がしばらく来ないと言って、聞いていたぜ。時々行くがいい。先生は一人ものだからな。我々が慰めてやらんと、いかん。今度何か買って来い」と言いっぱなして、それなり消えてしまった。すると、次の時間にまたどこからか現われた。今度はなんと思ったか、講義の最中に、突然、
「金受け取ったりや」と電報のようなものを白紙《しらかみ》へ書いて出した。三四郎は返事を書こうと思って、教師の方を見ると、教師がちゃんとこっちを見ている。白紙を丸めて足の下へなげた。講義が終るのを待って、はじめて返事をした。
「金は受け取った、ここにある」
「そうかそれはよかった。返すつもりか」
「むろん返すさ」
「それがよかろう。はやく返すがいい」
「きょう返そうと思う」
「うん昼過ぎおそくならいるかもしれない」
「どこかへ行くのか」
「行くとも、毎日毎日絵にかかれに行く。もうよっぽどできたろう」
「原口さんの所か」
「うん」
三四郎は与次郎から原口さんの宿所を聞き
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