ァてられては、東京市民が迷惑する。それより、美しい芸者の銅像でもこしらえるほうが気が利いているという説であった。与次郎は三四郎に九段の銅像は原口さんと仲の悪い人が作ったんだと教えた。
 会が済んで、外へ出るといい月であった。今夜の広田先生は庄司博士によい印象を与えたろうかと与次郎が聞いた。三四郎は与えたろうと答えた。与次郎は共同水道|栓《せん》のそばに立って、この夏、夜散歩に来て、あまり暑いからここで水を浴びていたら、巡査に見つかって、擂鉢山《すりばちやま》へ駆け上がったと話した。二人は擂鉢山の上で月を見て帰った。
 帰り道に与次郎が三四郎に向かって、突然借金の言い訳をしだした。月のさえた比較的寒い晩である。三四郎はほとんど金の事などは考えていなかった。言い訳を聞くのでさえ本気ではない。どうせ返すことはあるまいと思っている。与次郎もけっして返すとは言わない。ただ返せない事情をいろいろに話す。その話し方のほうが三四郎にはよほどおもしろい。――自分の知ってるさる男が、失恋の結果、世の中がいやになって、とうとう自殺をしようと決心したが、海もいや川もいや、噴火口はなおいや、首をくくるのはもっと
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