ヌうしたって想像できるものじゃない。ただへたに書くから人間と思われないのじゃないですか」
小説家はそれで黙った。今度は博士がまた口をきいた。
「物理学者でも、ガリレオが寺院の釣りランプの一振動の時間が、振動の大小にかかわらず同じであることに気がついたり、ニュートンが林檎《りんご》が引力で落ちるのを発見したりするのは、はじめから自然派ですね」
「そういう自然派なら、文学のほうでも結構でしょう。原口さん、絵のほうでも自然派がありますか」と野々宮さんが聞いた。
「あるとも。恐るべきクールベエというやつがいる。〔|ve'rite'《ヴェリテ》 vraie《ヴレイ》.〕 なんでも事実でなければ承知しない。しかしそう猖獗《しょうけつ》を極めているものじゃない。ただ一派として存在を認められるだけさ。またそうでなくっちゃ困るからね。小説だって同じことだろう、ねえ君。やっぱりモローや、シャバンヌのようなのもいるはずだろうじゃないか」
「いるはずだ」と隣の小説家が答えた。
食後には卓上演説も何もなかった。ただ原口さんが、しきりに九段《くだん》の上の銅像の悪口《わるくち》を言っていた。あんな銅像をむやみに
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