めてはいかん。
「実に気の毒な事だて、御上の仰せだから内約があるの何のと申し上げても仕方がない。それで帯刀が娘に因果《いんが》を含めて、とうとう河上方を破談にしたな。両家が従来の通り向う合せでは、何かにつけて妙でないと云うので、帯刀は国詰になる、河上は江戸に残ると云う取《と》り計《はからい》をわしのおやじがやったのじゃ。河上が江戸で金を使ったのも全くそんなこんなで残念を晴らすためだろう。それでこの事がな、今だから御話しするようなものの、当時はぱっとすると両家の面目に関《かか》わると云うので、内々にして置いたから、割合に人が知らずにいる」
「その美人の顔は覚えて御出《おい》でですか」と余に取ってはすこぶる重大な質問をかけて見た。
「覚えているとも、わしもその頃は若かったからな。若い者には美人が一番よく眼につくようだて」と皺《しわ》だらけの顔を皺ばかりにしてからからと笑った。
「どんな顔ですか」
「どんなと云うて別に形容しようもない。しかし血統と云うは争われんもので、今の小野田の妹がよく似ている。――御存知はないかな、やはり大学出だが――工学博士の小野田を」
「白山《はくさん》の方にいるで
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