その日その日を送っていたのです。いよいよと時日が逼《せま》った二三日前になって、何か考えなければならないという気が少ししたのですが、やはり考えるのが不愉快《ふゆかい》なので、とうとう絵を描《か》いて暮《く》らしてしまいました。絵を描くというと何かえらいものが描けるように聞《きこ》えるかも知れませんが、実は他愛もないものを描いて、それを壁《かべ》に貼《は》りつけて一人で二日も三日もぼんやり眺《なが》めているだけなのです。昨日でしたかある人が来て、この絵は大変面白い――いや面白いと云ったのではありません、面白い気分の時に描いた画《え》らしく見えると云ってくれたのでした。それから私は愉快だから描いたのではない、不愉快だから描いたのだと云って私の心の状態をその男に説明してやりました。世の中には愉快でじっとしていられない結果を画にしたり、書にしたり、または文にしたりする人がある通り、不愉快だから、どうかして好い心持《こころもち》になりたいと思って、筆を執《と》って画なり文章なりを作る人もあります。そうして不思議にもこの二つの心的状態が結果に現われたところを見るとよく一致《いっち》している場合が起
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