私の個人主義
夏目漱石

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)這入《はい》りました。

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大体|繰《く》ってみて、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)こだわり[#「こだわり」に傍点]
−−

    ――大正三年十一月二十五日学習院輔仁会において述――

 私は今日初めてこの学習院というものの中に這入《はい》りました。もっとも以前から学習院は多分この見当だろうぐらいに考えていたには相違《そうい》ありませんが、はっきりとは存じませんでした。中へ這入ったのは無論今日が初めてでございます。
 さきほど岡田さんが紹介《しょうかい》かたがたちょっとお話になった通りこの春何か講演をというご注文でありましたが、その当時は何か差支《さしつかえ》があって、――岡田さんの方が当人の私よりよくご記憶《きおく》と見えてあなたがたにご納得のできるようにただいまご説明がありましたが、とにかくひとまずお断りを致《いた》さなければならん事になりました。しかしただお断りを致すのもあまり失礼と存じまして、この次には参りま
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