超越していた。彼らは錦で作った※[#「ころもへん+上」、第4水準2−88−9]※[#「ころもへん+下」、第4水準2−88−10]《かみしも》のようなものを着ていた。その※[#「ころもへん+上」、第4水準2−88−9]※[#「ころもへん+下」、第4水準2−88−10]には骨がないので肩のあたりは柔《やわら》かな線でぴたりと身体《からだ》に付いていた。袖《そで》には白の先へ幅三寸ぐらいの赤い絹が縫足《ぬいた》してあった。彼らはみな白の括《くく》り袴《ばかま》を穿《は》いていた。そうして一様《いちよう》に胡坐《あぐら》をかいた。
 三沢は膝《ひざ》の上で何か書きかけた白い紙をくちゃくちゃにした。自分はそのくちゃくちゃになった紙の塊《かたま》りを横から眺めた。彼は一言《いちごん》の説明も与えずに正面を見た。青い毛氈《もうせん》の上に左の帳《とばり》の影から現われたものは鉾《ほこ》をもっていた。これも管絃《かんげん》を奏する人と同じく錦の袖無《そでなし》を着ていた。
 三沢はいつまで経《た》っても「もう一人の女はね」の続きを云わなかった。観覧席にいるものはことごとく静粛であった。隣同志で話をするのさえ憚《はば》かられた。自分は仕方なしに催促を我慢した。三沢も空とぼけて澄ましていた。彼は自分と同じようにここへは始めて顔を出したので、少し硬くなっているらしかった。
 舞は謹慎な見物の前に、既定のプログラム通り、単調で上品な手足の運動を飽《あ》きもせずに進行させて行った。けれども彼らの服装は、題の改《あらた》まるごとに、閑雅な上代の色彩を、代る代る自分達の眼に映しつつ過ぎた。あるものは冠に桜の花を挿《さ》していた。紗《しゃ》の大きな袖《そで》の下から燃えるような五色の紋を透《す》かせていた。黄金作《こがねづくり》の太刀《たち》も佩《は》いていた。あるものは袖口《そでぐち》を括《くく》った朱色の着物の上に、唐錦《からにしき》のちゃんちゃんを膝《ひざ》のあたりまで垂らして、まるで錦に包まれた猟人《かりゅうど》のように見えた。あるものは簑《みの》に似た青い衣《きぬ》をばらばらに着て、同じ青い色の笠《かさ》を腰に下げていた。――すべてが夢のようであった。われわれの祖先が残して行った遠い記念《かたみ》の匂《にお》いがした。みんなありがたそうな顔をしてそれを観《み》ていた。三沢も自分も狐に撮《
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