る死と云う実際と、人間の獣類たる坑夫の住んでいるシキ[#「シキ」に傍点]とを結びつけて、二三日前まで不足なく生い立った坊っちゃんを突然宙に釣るして、この二つの間に置いたとすると、坊っちゃんは始めてなるほどと首肯する。運命は不可思議な魔力で可憐な青年を弄《もてあそ》ぶもんだと云う事が分る。すると今までただの山であったものが、ただの山でなくなる。ただの土であったものがただの土でなくなる。青いばかりと思った空が、青いだけでは済まなくなる。この病院の、この診察場の、この薬品の、この臭いまでが夢のような不思議になる。元来この椅子《いす》に腰を掛けている本人からしてが、何物だかほとんど要領を得ない。本人以外の世界は明瞭《めいりょう》に見えるだけで、どんな意味のある世界かさっぱり見当《けんとう》がつかない。自分は、診察場と薬局とをかねたこの一室の椅子に倚《よ》って、敷物と、洋卓《テエーブル》と、薬瓶《くすりびん》と、窓と、窓の外の山とを見廻した。もっとも明瞭な視覚で見廻したが、すべてがただ一幅の画《え》と見えるだけで、その他《ほか》には何物をも認める事ができなかった。
 そこへ戸を開けて、医者があら
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