」に傍点]が出て来た。金《きん》さんがよっしょいよっしょいと担《かつ》がれて来るところが見える。あれでも病院が必要なのかと思った。何のために薬を盛って、患者を施療《せりょう》するのか、ほとんど意義をなさない。こんな体裁《ていさい》のいい偽善はない。病人はいじめるだけいじめる。ジャンボー[#「ジャンボー」に傍点]は囃《はや》したいだけ囃す。その代り医者にかけてやると云うのか。鄭重《ていちょう》の至りである。
「おいあっちへ廻れ」
と突然受附の声がした。見ると受附は硝子窓の中に威丈高《いたけだか》に突立って、自分を眼下に睥睨《へいげい》している。自分は控所を出た。右へ折れて、廊下伝いに診察場へ上がったら、薬の臭《におい》がぷんとした。この臭を嗅《か》ぐと等《ひと》しく、自分も、もうやがて死ぬんだなと思い出した。死んでここの土になったら不思議なものだ。こう云うのを運命というんだろう。運命の二字は昔から知ってたが、ただ字を知ってるだけで意味は分らなかった。意味は分っても、納得《なっとく》がむずかしかった。西洋人が筍《たけのこ》を想像するように定義だけを心得て満足していた。けれども人間の一大事た
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