、控所へ這入《はい》ると、下はやはり和土で、ベンチが二脚ほど並べてある。小さい硝子窓《ガラスまど》には受附と楷書で貼《は》りつけてある。自分はこの窓口へ行って、自分の姓名を書いた紙片《かみきれ》を出すと、窓の中に腰を掛けていた二十二三の若い男が、その紙片を受取って、ありもしない眉《まみえ》へ八の字を寄せて、むずかしそうにとくと眺《なが》めた上、
「こりゃ御前か」
と、さも横風《おうふう》に云った。あまり好い心持ではなかった。何の必要があって、こう自分を軽蔑《けいべつ》するんだか不平に堪《た》えない。それで単に、
「ええ」
と出来るだけ愛嬌《あいきょう》のない返事をした。受附は、それじゃ、まだ挨拶《あいさつ》が足りないと云わんばかりに、しばらくは自分を睨《にら》めていたが、こっちもそれっ切り口を結んで立っていたもんだから、
「少し待っていろ」
と、ぴしゃりと硝子戸《ガラスど》を締めて出て行った。草履《ぞうり》の音がする。あんなにばたばた云わせなくっても好さそうなもんだと思った。
自分はベンチへ腰を掛けた。受附はなかなか帰って来ない。ぼんやりしていると、眼の前にジャンボー[#「ジャンボー
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