へ出そうで容易に踏み込めない。
 そこで自分は暗い中に立ち留って、カンテラ[#「カンテラ」に傍点]の灯《ひ》を見詰めながら考えた。往きには八番坑まで下りて行ったんだから帰りには是非共電車の通る所まで登らなければならない。どんな穴でも上《のぼ》りならば好いとする。その代り下りなら引返して、また出直す事にする。そうして迂路《うろ》ついていたら、どこかの作事場《さくじば》へ出るだろう。出たら坑夫に聞くとしよう。こう決心をして、東西南北の判然しない所を好い加減に迷《まご》ついていた。非常に気が急《せ》いて息が切れたが、めちゃめちゃに歩いたために足の冷たいのだけは癒《なお》った。しかしなかなか出られない。何だか同じ路を往ったり来たりするような案排《あんばい》で、あんまり、もどかしものだから、壁へ頭をぶつけて割っちまいたくなった。どっちを割るんだと云えば無論頭を割るんだが、幾分か壁の方も割れるだろうくらいの疳癪《かんしゃく》が起った。どうも歩けば歩くほど天井《てんじょう》が邪魔になる、左右の壁が邪魔になる。草鞋《わらじ》の底で踏む段々が邪魔になる。坑総体が自分を閉じ込めて、いつまで立っても出してく
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